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子宮頸がんとその前がん病変・HPVとは

子宮にできるがんには子宮頸がんと子宮体がん (=子宮内膜がん) があり、子宮の入り口 (子宮頸部)にできるがんを「子宮頸がん」、子宮の奥 (子宮体部)にできるがんを「子宮体がん」といい、子宮頸がんは子宮がん全体の約7割を占めます。子宮頸がんの原因の95%以上がヒトパピローマウイルス (HPV: Human Papilloma Virus) の感染が原因であることがわかっています。

Q & A : HPVとはどういうウイルスですか?

HPVは性交渉によって感染するごくありふれたウイルスです。
200種類以上の型がありますが中でも10数種類が子宮頸がんの発がんに関わるハイリスク型として知られています。男女を問わず、性交経験のある人の約8割が生涯に一度はこのHPVに感染しますが、感染しても通常はその後自己免疫によってHPVは自然に体外へ排除されます。
ただし、ウイルスが体外へ排出されず、感染した状態が数年から十数年にわたって持続した場合、一部は前がん病変となり、さらにその一部が子宮頸がんに進行していきます。(下図)
HPVは男性でも、咽頭がん、直腸がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどの発生の原因となります。

HPV感染から子宮頸がんまでの進行
日本産婦人科学会・日本病理学会編 子宮頸癌取り扱い規約 病理篇 第4版および日本産婦人科学会誌 2006を基に作図

Q & A : 子宮頸がんはどのくらいの人が罹患していますか?

2017年の統計では、国内では年間に約1万人が発症し、約2800人が死亡しています。多くの先進国では子宮頸がんの死亡数は減少していますが、日本では罹患数も死亡数も増加傾向にあります。
また、日本では子宮頸がんに罹患する人は20代後半~40代と若年化が進んでいます。若年層での罹患率は発展途上国と同程度です。日本では子宮頸がんは若い人がかかる病気に変化しているのです。

Q & A : 子宮頸がんの前がん病変とはなんですか?

子宮頸がんの前がん病変のことを子宮頸部異形成(異型上皮)といいます。
子宮頸がん検診で異常を指摘された場合、子宮頸部の組織検査(生検)によって診断します。
子宮頸部異形成には軽度異形成、中等度異形成、高度異形成という3段階があり、高度異形成の方や中等度異形成の一部の方など将来子宮頸がんに進行する確率が高い方には子宮頸部レーザー蒸散術子宮頸部円錐切除術という局所治療をお勧めしています。

Q & A : 子宮頸部円錐切除術とはどういう治療ですか?

子宮頸部を円錐状に切除する治療で、高度異形成や初期の早期がん(上皮内がん)の方に対する治療法です。診断と治療を兼ねることができます。
子宮を残すことが可能なのでその後の妊娠も可能ですが、一方で妊娠における流産や早産のリスクを高めたり、子宮の入り口が細くなったり閉じてしまう可能性のリスクを伴い、将来の妊娠・出産に影響が出る場合もあります。
日本では年間に約14,000人の方がこの手術を受けており、そのうち約1,300人がその後妊娠しています。

Q & A : 子宮頸がんの治療法は?

浸潤がん(いわゆる子宮頸がん)に対しては、基本的には子宮や卵巣を摘出、骨盤内のリンパ節を広く廓清する広汎子宮全摘術といわれる根治手術や、放射線治療、抗がん剤による治療などが選択されます(これらの治療を複数組み合わせることも多々あります)。 

子宮頸がんの進行症例の予後は依然として不良であり、日本では年間に約2,800人が亡くなりその死亡数は多くの先進国とは違い、年々増加しています。
また、これらの治療により妊娠できなくなる、排尿障害、下肢のリンパ浮腫、ホルモン欠落症状など手術による様々な後遺症に悩まされている患者さんも少なくありません。

♦子宮頸がん検診を受けましょう!

子宮頸がんは早く発見できれば治る病気です。前がん病変の段階で見つけて治療すれば子宮を残して将来の妊娠も可能になります。しかしながら、現在日本での子宮頸がん検診率(全年齢の平均値)は42%くらい、20歳代になると25%くらい、と先進諸国に比べて圧倒的に低い値です。(下図)

   厚生労働省「がん検診の国際比較」より作図


子宮頸がん検査自体は1分もかからず終わる検査です。また、HPV-DNA検査で現在HPVに感染しているかどうかの検査もおこなうこともできます。
また、同時に超音波検査(経腟超音波検査)を受けることで、子宮筋腫や卵巣のう腫などの良性の病気など多くのことがわかりますのでぜひ定期的な婦人科検診を受けましょう。
     
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