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子宮頸がんワクチン (HPVワクチン) の副反応について

頸癌ワクチン (HPVワクチン) の安全性に対する評価


  子宮頸がんワクチンとその有効性についてはコチラ

以前に頸がんワクチン (以下HPVワクチン) 接種後の「多様な症状」のセンセーショナルな報道が数多くなされたことで接種に対してご心配な方も多いと思います。「日本産婦人科学会」や厚労省のHPなどをまとめると以下のようになります。


Q & A : HPVワクチンの副反応にはどういう症状がありますか?

接種後にみられる主な副反応として、注射部位の一時的な痛みや腫れ、紅斑などの局所的症状が挙げられます(約8割)。また、注射による痛みや不安、興奮などをきっかけとした失神(血管迷走神経反射)を起こす可能性もありますが、これについては接種後30分程度座って安静にしていただき経過観察することで対応が可能です。
これらはインフルエンザワクチンなど他の種類のワクチン接種にも起こり得る副反応といえます。

シルガード9(9価ワクチン)が国内で承認された時点での副反応とその頻度は以下のようになっています。(製薬会社のMSDのHPより)
国内試験:注射部位の副反応は、接種後5日間に100例中95例(95%)に認められ、主なものは疼痛93例(93%)、腫脹42例(42%)、紅斑33例(33%)、搔痒感4例(4.0%)、出血3例(3%)、熱感3例(3%)でした。全身性の副作用は、本剤接種後15日間に100例中14例(14%)に認められ、主なものは発熱3例(3%)、頭痛2例(2%)、悪心2例(2%)、感覚鈍麻2例(2%)、腹痛2例(2%)でした(承認時)。

また、まれに起こり得る重大な副反応として、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹などでワクチン接種全体に共通する副反応)、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などが挙げられます。その頻度は厚労省の発表では以下のようになっています。

・アナフィラキシー:呼吸困難、蕁麻疹などを症状とする重いアレルギー反応
  ⇒約96万回接種に1回
・ギラン・バレー症候群:両手や足の力の入りにくさを症状とする末梢神経の病気
  ⇒約430万回接種に1回
・急性散在性脳脊髄炎(ADEM):頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気
  ⇒約430万回接種に1回
・複合性局所疼痛症候群(CRPS):外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気
  ⇒約860万回接種に1回
(※2013年3月までの報告のうちワクチンとの関係が否定できないとされた報告頻度)


Q & A : HPVワクチン接種後の「多様な症状」とはなんですか?

・平成29年11月の厚生労働省専門部会において、接種部位に限局しない慢性の痛みやしびれ、脱力などの運動機能障害、不随意運動などが、「多様な症状」としてHPVワクチン接種後に報告されました。
その後これらの症状とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、これらは機能性身体症状と考えられるという見解が発表されています。

・平成28年12月に発表された厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査では、HPVワクチンを接種していない女子でも、接種した女子に報告されている「多様な症状」と同様の症状を呈する人が一定数 (12~18歳女子で10万人あたり20.4人)存在することが明らかにされ、「多様な症状」がHPVワクチン接種後の特有の症状ではないことが報告されました。
・名古屋市で行われたアンケート調査(「名古屋スタディ」)では、24種類の「多様な症状」の頻度が、HPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子とでは有意差がなかったことが示され、HPVワクチン接種と24症状の因果関係は証明されませんでした。

・これまでのHPVワクチンに関する多くの臨床研究を統合解析したコクランレビュー(国際的団体のコクランが作成している医学論文の系統的なレビュー)では、HPVワクチンにより短期的な局所反応(接種部位の反応)は増加するものの、全身的な事象や重篤な副反応は増加しないと報告されています。
・世界保健機関 (WHO)も世界中の最新データを継続的に評価し、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題は見つかっていないと発表しています。


Q & A : HPVワクチン接種後に症状が現れた場合どうしたらいいですか?

・HPVワクチン接種後になんらかの症状が現れた方のための診療相談窓口が全国85医療機関(すべての都道府県)に設置されています。福岡県では、九州大学病院のペインクリニック、福岡市立こども病院の総合診療科、飯塚病院の小児科、久留米大学病院の婦人科、産業医科大学病院の小児科と婦人科が窓口になっています。
厚生労働省の相談窓口、および福岡市の相談窓口の連絡先はコチラ↓をご参照ください。
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokenyobo/health/vaccine/2506HPV.html

・平成29年7月の厚生労働省研究班 (牛田班)の報告では、HPVワクチン接種後に症状を呈する方に対する認知行動療法といわれる治療方法の効果に対する解析結果が示されました。それによると、156例中115例(73.7%)は症状が消失または軽快し、32例(20.5%)は不変、9例(5.8%)は悪化したとされました。 

・HPVワクチン接種の有無に関わらず、思春期に多いとされる、慢性の痛みや運動機能の障害など多様な症状が長く続く患者さんの中には回復が難しい方がいるのも事実であり、早期から複数の診療科の専門家が連携して適切な治療にあたることが必要と思われます。


 ※ 参考:ワクチン接種ストレス関連反応 (ISRR: Immunization stress-related response)という概念について
世界保健機関 (WHO)は、最近「ワクチン接種ストレス関連反応」(ISSR)という概念を提唱しています。これは、ワクチンの接種前、接種時、接種直後にみられる“急性反応”として、頻脈、息切れ、口喝、手足のしびれ、めまい、過換気、失神など、そして接種後の“遅発性反応”としての脱力、麻痺、異常な動き(不随意運動)、不規則な歩行、言語障害などの解離性神経症状的反応などが含まれています。
ワクチンが直接の原因ではない症状も含む、好ましくない事象(有害事象)とワクチン接種に伴う免疫の付与以外の反応(副反応)を区別して評価することが重要とされます。
 
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